2020年10月28日水曜日

『道しるべ』第15号を公開しました

子ども脱被ばく裁判の会報『道しるべ』15号が完成いたしました。
こちらの校正ミスで紙媒体にはいくつかの誤表記があり正誤表を付けて配布しております。PDF版は修正済みですのでそのままダウンロードください。

https://datsuhibaku.blogspot.com/p/blog-page_5.html

2020年8月14日金曜日

結審報告集会の動画と書き起こし完成!

子ども脱被ばく裁判の会支援団体・脱被ばく実現ネットのご尽力により、第27回期日の結審報告集会の動画と書き起こしが完成しました。

本裁判の貴重な記録です。どうぞご覧ください。拡散も大歓迎です。

https://fukusima-sokai.blogspot.com/2020/08/27.html



2020年8月9日日曜日

子ども脱被ばく裁判、結審しました!

 

子ども脱被ばく裁判を支援してくださるみなさま

 2014年8月、福島地裁に提訴された子ども脱被ばく裁判は、今年7月28日に最終弁論が行われ結審となりました。大雨やコロナ禍にもかかわらず、当日は全国より多数お集まりいただき、ありがとうございました。この日、福島地裁には「公正な裁判を求める署名」3702筆が提出され、総計で85844筆となりましたことも、感謝を持って報告します。今も届けられている署名は、後日、今野原告代表が福島地裁に提出します。

 最終弁論を終えた弁護団や原告を迎えた会場は、ともに結審を迎えることができた喜び、達成感で溢れていました。今回はIWJさんのご協力により配信しましたので、ネット参加の方も多数おられたことと思います。原発賠償京都訴訟原告のみなさん、さよなら原発尼崎、明石たこの会、おしどりマコさんケンさんからは温かいメッセージが届き、大きな励ましをいただきました。ありがとうございました。

 当日会場へ足を運んでくださったみなさん、各地でこの日を覚えてくださったみなさんに、支援者、原告、弁護団の代表から当日の報告とご挨拶申し上げます。どうぞご一読ください。


■子ども脱被ばく裁判結審報告 共同代表・水戸喜世子

 第27回子ども脱被ばく裁判はとうとう最終弁論を終えることができました。判決は3月1日と決まりました。半年以上の長きにわたる時間が裁判長に与えられたのです。必ずや誠実に慎重に精査を重ね、国の不正を糾す公平な判決を出させねばなりません。その為に、私たちは何が有効な闘いとなるか今後の半年を悔いなく闘い抜きたく思います。コロナ禍でさまざまな制限がありますが、工夫をしながら子ども裁判で暴き出した、報道されてこなかった真実を草の根のように伝えていくのも大事な支援者の役割です。

 内部被ばくの問題、事故後の隠蔽主義は徹底していました。初期被ばく量を正しく測定しなかったことは、甲状腺検査多発の結果を因果関係なしと強弁する根拠を国側に与えました。最終弁論では、子どもを守ろうとしなかった不作為-安定ヨウ素剤の不投与、スピーディー非公開などの追求が厳しく行われました。憲法26条子どもの教育権に基づいて安全な場所で教育を受ける権利は、実は法律的には幾重にも法規で守られていて、学校環境安全基準は健康被害をもたらす環境での教育などは認めていない。目下のところ、国側の論理の通った反論は何一つ聞こえてきません。専門家への見当違いのイチャモンだけで、批判にもなっていません。内容的には圧勝といえます。

 この日の法廷は一般傍聴席はコロナ対応で13席のみ。抽選に外れ方たちは、アオウセに移動して、河野益近氏とちくりん舎の青木一政氏から放射能ばらまきの現状を50人が学びました。法廷では原告団長の明快な最終陳述のあと、弁護団6人の侍が各々のパートを担当して、各論点につき圧巻の追究。心の中で大きな大きな拍手を送りました。反論できるものなら、してみろ!本当にそう思います。大人は原発を作り、罪もない子供に多大の被害を与えました。詫びても済むものではないのですが、持てる限りの知恵を尽くし、国に心底からの怒りの異議申し立てをしました。これによって未来の子どもへの謝罪の一区切りがついたおもいです。

「現実に汚染の止まらない環境の福島で中で子どもたちは生きている。その子たちをどうするのですか」。報告集会参加者から鋭い質問がでました。司会は「重すぎて即答できない」と答えるしかありませんでした。この現実の中、どのように命を守るかはみんなが考えていかねばならないことです。300ページに及ぶ最終準備書面と原告意見陳述Ⅱの発刊に向けて、準備が進んでいます。東電福島原発事故がもたらした諸問題に立ち向かう軌跡が記されています。ご期待ください。


■原告団挨拶 原告団代表 今野寿美雄

 2020年7月28日、 子ども脱被ばく裁判が結審しました。皆様の応援御支援ありがとうございます。来年3/1に判決が出ます。子ども達が安心安全な環境で生きていける様な判決が出ます事を切に願っています。これまでの思いの全てを意見陳述に込めました。どうぞご覧ください。

子ども脱被ばく裁判 最終意見陳述書 原告代表 今野寿美雄

 原告を代表して、最終の意見を述べさせていただきます。6年の長きに渡り審議が続いてきましたが、この裁判を通して不溶性の放射性微粒子の存在及びこの物質による内部被ばくの危険性が解ってきました。これは、当裁判や他の訴訟に於いても原告側の主張を裏付ける確固たる証拠であり、非常に重要なポイントだと思います。また、事故時から現在に至るまでの行政の間違った対応や「ニコニコ安全論」等により、無用な被ばくを受けることになりました。更に、福島県民だけが年間20ミリシーベルトの被ばくを受忍させられています。到底許されるものではありません。

 9年以上が過ぎた今でも、多くの親達が子ども達の健康に不安を抱いています。子どもを心配することは親として当然の行為です。9年以上が過ぎたからと言って、原発事故は終わったわけではありません。今尚、大量の汚染水を産み出し、放射性物資を大気へ海へと放出を続けています。原発事故は、今も続いていることを忘れてはいけません。原子力緊急事態宣言発令中です。

 県民健康調査検討委員会では、今年3月末の集計で公表された小児甲状腺がんの患者の数が、確定者及び疑いのある者を合わせて240名になっています。また、この数に含まれない患者の存在も当裁判を通して明らかになりました。患者本人及び親、家族達の痛切な思いが察せられます。甲状腺検査でB判定と診断された子ども達が多数います。子どもを被ばくから護れなかった親達の無念の声があがっています。

 子ども達は、子ども達で子ども達を護ることはできません。子ども達を護ることができるのは、私達大人達しかいないのです。子どもを護ることは、私達大人達の責任です。それは私達に課せられた義務です。

 被告及び被告代理人の方々に申し上げます。皆さまにも子どもや孫達がいると思います。私達人間はそんなに賢くないと思うので、また同じような間違いを起こすと思います。ですから、皆さまは今回の事故について、国や行政の過ちを小さく見せようとするのでなく、将来を見据えた反省を、私達原告と共に被告の立場を越えて、親として大人として子ども達を護っていく為に、どうしたら良いかを考えて行動していかなければなりません。それが、大人達の責任であり義務であると思っています。

 子どもは未来からの贈り物です。かけがえのない宝物です。子どもの健やかなる成長が親の願いです。子ども達には、安全で安心な環境で教育を受ける権利があります。行政はこの権利を護らなければなりません。私達原告は、子ども達を護りたい一心で立ち上がりました。当法廷に出席できない親子の声を預かり、原告を代表しまして最後の意見陳述をさせていただき、ありがとうございました。裁判官の皆さまにおかれましては、原告の思いを受けとめていただき、子ども達に安全安心な環境と未来を提供できるような判決を出していただくことを切にお願いいたします。ご静聴、ありがとうございました。以上です。


■弁護団挨拶 弁護団長 井戸謙一

 子ども脱被ばく裁判は7月28日の口頭弁論期日で審理を終結しました。あとは来年3月1日の判決を待つだけです。約6年にわたり、多大なご支援をいただきありがとうございました。署名の最終期限が迫った時期、毎日のように全国津々浦々から多数の署名が私の事務所に届きました。最後の2~3日は多くの署名が速達で送られてきました。ほとんど報道もされない裁判ですが、多数の人々の熱い思いが伝わり、身が引き締まる思いがしました。

 この国における被ばく問題の軽視は目に余ります。ヒロシマ・ナガサキ、ビキニから引き続く問題ですが、これによって切り捨てられた多くの被害者が存在したし、今、フクシマでも多くの人が切り捨てられようとしています。他方、これに対する闘いも営々と続けられてきたのであり、最近も「黒い雨」訴訟では見事な成果が出ました。被害者が声をあげ、それを心ある市民と科学者、そして法律家が支えることでしか、この問題を打開することはできません。私たち弁護団は、原告の人たちの心からの叫びに背中を押され、科学者の方々の援助と支援者の励ましに勇気づけられ、400頁に及ぶ最終準備書面を書きあげました。判決がどのような結果になるとしても、問題提起の役割は果たせたのではないかと自負しています。

 今後も、被ばくに関連して、様々な問題が発生し、新たな訴訟も起こされるでしょう。被ばく問題は、ヒトが「核エネルギー」を手にし、一部の人間がこれを力として使いたいという野望を抱いた時に始まった問題であり、「核エネルギー」の政治的利用を断念するまで続く問題でしょう。私たちは目の前の出来事を問題にして闘っていますが、これは、世代を超え、国を超えた闘いの一環でもあります。これからも、次の世代のために、皆様方とともに、私たちの世代の責任の一端を果たしていきたいと念願しています。ありがとうございました。

◎子ども脱被ばく裁判弁護団ブログ:http://fukusima-sokaisaiban.blogspot.com


■当日の様子は下記からご覧になれます。みなさまのご協力に感謝いたします。

◎IWJ 子ども脱被ばく裁判第27回期日 学習会・記者会見・報告集会
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/478893


◎脱被ばく実現ネット 子ども脱被ばく裁判最終弁論 判決は3月1日に!
https://fukusima-sokai.blogspot.com


◎和田珠輝さん 「子ども脱被ばく裁判」結審レポート
https://note.com/momsrevo/n/n9e9dfc1dc4dc

2020年7月26日日曜日

第27回期日「ネット配信」のお知らせ

みなさま
来週7月28日(火)は子ども脱被ばく裁判結審となりますが、コロナ禍により参加を見合わせている方も多数おられます。当日、IWJさんのご協力により、午後1時30分の学習会からネット配信を行うことになりました。全国各地からぜひ見ていただきたいと思います。情報拡散にもご協力ください。


■7月28日(火)子ども脱被ばく裁判第27回期日
□配信チャンネル:https://twitcasting.tv/iwj_areach2
13:30 学習会「内部被ばくの危険性〜最新情報を語る」
講演1「大気中を漂う放射性物質」河野益近氏
講演2「ちくりん舎の活動から見えて来た放射能ばらまきの実態」青木一政氏
15:30 記者会見
16:00 報告集会
17:00 閉会

2020年7月3日金曜日

子ども脱被ばく裁判第27回期日のご案内【会場変更あり】

子ども脱被ばく裁判の会 原告、支援者のみなさま

再度、第27回期日のご案内をします。会場が市民会館からMAXふくしま・アオウゼに変更になりました。ご注意ください。
井戸弁護団長のアピールのように、弁護団は並々ならぬ奮闘により作成された最終準備書面を携えて結審に臨みます。新型コロナウイルスの感染拡大により制限があるなかでの期日となりますが、全国各地から本裁判につながってください。再度、最後の事務局からのお知らせにもお目通しを願いします。また、地裁前からアオウゼまでのバス時刻表も参考にしてください。

■子ども脱被ばく裁判第27回期日のご案内■
□日時:2020年7月28日(火)12:00〜17:00
□会場:裁判:福島地方裁判所 〒960-8512   福島市花園町5-38 
    学習会・記者会見・報告集会 〒960-8051 福島県福島市曽根田町1-18 MAXふくしま アオウゼ多目的ホール
□日程:
12:00 福島地裁前集合・アピール。終了後、学習会参加者はアオウゼに移動。
13:00 傍聴券配布
13:30 開廷
14:15 閉廷
13:30 学習会「内部被ばくの危険性〜最新情報を語る」講師:河野益近氏、青木一政氏
15:30 記者会見
16:00 報告集会
17:00 閉会

■弁護団アピール〜結審に向けて 共同弁護団長 井戸 謙一 2020年7月2日
弁護団はさる7月1日、最終準備書面を完成させ、福島地裁に提出しました。約6年間にわたった私たちの訴訟活動の集大成として取り組んだ結果、300頁を超える大部なものになりました。書き上げたのは弁護団ですが、その内容は、郷地先生、河野先生をはじめとする専門家の方々のご指導、メディア関係者及び多数の市民の方々からお寄せいただいた貴重な情報の数々、そして直接の被害にあわれた原告の方々からの胸の詰まる多くの経験談等をまとめたもので、この裁判に関係していただいた皆様方の力の結集による成果です。

福島原発事故後のこの国の被ばく防護政策は、約1世紀にわたる多くの被ばく者の犠牲の上に積み上げられてきた国際的な被ばく防護の常識を踏みにじり、後退させるものでした。福島原発事故による被ばく被害はないものと決めつけられ、被害者は切り捨てられました。被ばく問題は多岐にわたり、この裁判で取り上げた問題点は、その一部に過ぎません。しかし、被ばく被害の軽視、無視、被害者切捨ての風潮がいよいよ強まっているこの国で、それに抗った多くの人たちが確かに存在し、裁判という手段を使って、被ばく被害者の権利と被害の実相を訴え続けた事実を記録として残すことは、歴史に対する責任であると考えます。私たち弁護団は、そういう思いで最終準備書面を書き上げました。7月28日の口頭弁論期日は、コロナ禍の中で傍聴人数が制限され、支援の方々の行動予定も難しいものになっていますが、節目の結審の日ですので、多くの方に見守っていただきますよう、お願い致します。以上

■学習会講師紹介
□河野益近氏:専門は環境放射能、放射線計測、核計測を応用した極微量元素分析。第一種放射線取扱主任者。「子ども人権裁判」原告が通学する環境の放射線測定に協力、助言。現在はホットパーティクル(セシウムボール)の調査に力を注ぐ。

□青木一政氏:福島老朽原発を考える会(フクロウの会)メンバー。ちくりん舎(NPO法人市民放射能監視センター)副理事長。福島原発事故後は子どもの尿検査やリネン法による空間線量の測定を継続。最近はバイオマス発電による環境汚染に警告する活動を行っている。

■【重要!事務局からのお知らせ】
福島地裁の判断で今回の傍聴者は「15名程度」となります。傍聴希望の方は、事前に事務局までご一報くださり、当日は傍聴券抽選に並んでください。この15名には原告席に座れない原告、本裁判支援者以外の一般傍聴希望者も含まれますことも、ご了解ください。
・MAXふくしま・アオウゼへの移動は、以下のバス情報をご覧になり、各自での移動をお願いいたします。
・裁判と並行して学習会を開きます。講師お二人には最近の研究や調査から明らかになったことを報告していただきます。
・当日、学習会から報告集会までIWJによるツイキャス配信を行います。視聴者の質問にも答えられます。福島市までお出でになれない方は、ぜひご覧、ご参加ください。

■情報:福島地裁からMAXふくしま・アオウゼまでの移動について
・ももりん1コース「福島市役所前」で乗車し、「MAXふくしま」で下車してください。「市役所前」停留所は福島地裁前になります。
・市内循環ももりんバス路線図:
http://www.city.fukushima.fukushima.jp/koutsuu-seisaku/kurashi/kotsu/kotsukikan/documents/56166.pdf
・発着時刻・運賃検索
https://busget.fukushima-koutu.co.jp/fromto/result/751/5422/


■子ども脱被ばく裁判の会■
kodomo2015-info@oregano.ocn.ne.jp

2020年3月10日火曜日

第26回子ども脱被ばく裁判期日報告と感謝

子ども脱被ばく裁判につながるみなさま

 3月4日(水)、福島地裁で行われた子ども脱被ばく裁判第26回公判に多数ご参加くださり、心より感謝申し上げます。今にも雨や雪が降りそうな寒さでしたが、12時より始まった地裁前アピールには80名ほど集まり、通路を確保するために両脇に長い列ができました。諸裁判の原告や支援者より連帯と激励のアピールをいただき、1678筆の署名を持って地裁に入る原告団を拍手と声援で送りました。60席の傍聴券に103名が並びました。福島の支援者のためにとご自身の傍聴券を譲ってくださった方々、また知り合い同士が裁判の前半と後半に分かれて傍聴した多くの方々に心より感謝致します。

 以下、片岡の個人的な感想も含め当日の法廷の様子を報告します。長文容赦ください。
 法廷に現れた山下氏は傍聴席を見ることなく着席し裁判が始まりました。冒頭約40分間、スライドを使って、被告国と県の代理人が質問しながら、山下氏が主張してきたことの説明がありました。その後90分に亘る尋問で原告代理人6名は、福島原発事故後の山下氏の発言の矛盾を次々と指摘。あの時は緊急時であり、パニックを起こしていた県民を鎮めるために、放射線の危険性は敢えて省き単純明快な説明したが、それは意図的ではなかったと述べる一方、一部自分が発した情報や発言の誤りを認めました。

 山下氏が主張するクライシスコミュニケーションは緊急時には相手の意見を聞く必要はなく、安心させることが目的です。しかし、本来のクライシスコミュニケーションは緊急時だからこそ情報を開示し安全を確保することであり、コミュニケーションは双方向のやりとりが大前提です。そして、なにより科学者の使命は、科学的な検証によって得られる事実が、例えリスクのあることであっても伝え、この社会に役立ていのちを守っていくことだと私たちは考えます。緊急時だからこそ、正しい情報を私たちは求めるのです。しかし、山下氏は独自のクライシスコミュニケーションを展開し、それが家族や地域社会の中に大きな分断を持ち込み、私たちは今でも苦しんでいます。本人は科学的根拠に基づいたものだったと主張しても、世界的権威の「ニコニコ発言」は究極的なパターナリズムでしかないと言えます。
※パターナリズム(英: paternalism)とは、強い立場にある者が、弱い立場にある者の利益のためだとして、本人の意志は問わずに介入・干渉・支援することをいう。 親が子供のためによかれと思ってすることから来ている。ウィキペディアより

 一部、自分の誤りを認めた山下氏が強く否定したのは「小児甲状腺がんの多発」について、弁護団が追求したときでした。大きな声で「多発ではない、多数見つかっただけだ」と答えました。他の自分の言動の誤りを認めたとしても、甲状腺がんだけは認めるわけにはいかない。認めてしまったら、原子力政策の根幹を揺るがすことを意味するのだろうと想像していました。声を荒げることがないイメージの山下氏だっただけに、その場面はとても印象的でした。

 弁護団は、山下氏の言動の矛盾を突き付け渾身の追求を続け、その指摘を受け一部誤りを認め「言葉足らずの説明だった。誤解を招いたなら申し訳ない」と謝罪の言葉を述べましたが、首筋が徐々に赤みを帯びていく様子が最後列の傍聴席からも見て取れました。原告席からは唇が震え始めた様子が見えたとのことです。

 最後に被告代理人の「どのような思いでリスクアドバイザーを務めたのか」との追加質問に、山下氏は次のような発言をしました。「長崎の原爆被爆者、チェルノブイリ事故の被災者に接した経験を福島に活かすというのは運命的だと感じた。福島県民に一番伝えたかったことは『覆水盆に返らず』ということだった」。その発言を受けて被告代理人から、すぐさま「リスクアドバイザーとして県民の健康を願っていたのですね」とフォローがあり「その通りです」と返答。彼の心の中にはあったのは、県民ではなく「自分の運命」と「覆水盆に返らず」でした。2011年5月5日、喜多方市で行われた山下氏講演会で聞いた結びの言葉「今は国家の緊急時。国民は国家に従わなくてはならないのです」から何も変わっていない、被災者被害者の訴えとはかけ離れた9年間を、彼は過ごしていたことが分かりました。

 傍聴券を入手できなかった参加者は市民会館へ移動し、水戸喜世子共同代表が担当する学習会に参加しました。
最初に、2月29日と3月1日に行われた「ふくしまはオリンピックどころでねえ」のスライドと報告を行いました。ちょうど学習会に参加した武藤類子さんからも詳しくお話を伺いました。次ぎに井戸弁護士のスライドを使って「被ばくの仕組み、不溶性微粒子の存在と健康影響、多岐に渡る放射線健康被害、司法は内部被ばくとどう向き合ってきたのか」を説明。水戸代表の説明に河野益近氏が加わり、さらに分かりやすい学びとなりました。最後は東電刑事訴訟のDVD上映でした。参加者は30名弱となりました。裁判とほぼ同じ3時間で終了。武藤さんや河野さんのお話を直接伺うことができたと、参加者からも好評でした。

 裁判終了後、傍聴者は市民会館へ移動し学習会参加者に合流し、弁護団報告と記者会見、意見交換が行われました。闘い抜いた弁護団からは追求の焦点や法廷で明らかになったことなど、詳しい報告がありました。また支援者からは最終弁論に向けて弁護団に期待と要望が出されました。報告集会の模様はIWJの動画で本日3月10日夕方6時より、配信になります。また支援団・脱被ばく実現ネットからは既に配信されています。

 フリージャーナリストの粘り強い取材に感謝いたします。今回は全国メディアの取材もありましたが、私が把握している県内メディアは1社でした。今野寿美雄弁護団代表は期日毎に記者クラブに案内を送り、ここ数回は弁護団による事前記者レクも行いました。このように県内メディアの動きがないことは「敢えて取材しない」姿勢の表れではないかと考えられます。安心神話を牽引する山下氏や鈴木眞一氏の出廷は、オリンピックによる復興騒ぎに逆行することなのでしょう。

 6年に近く行われた口頭弁論の最終証人尋問に山下俊一氏が立ったことは、東電福島第1原発事故被害の原点に戻ったことを意味します。この裁判はいくつもの「難しいかもしれない…」と思えることを実現させてきました。これは弁護団の奮闘なしには為し得なかったことです。法廷で正義を実現させることだけに、邁進してきた弁護団の結束力と弁護士魂に心から敬服します。どれほどの感謝の言葉でも不充分だと感じています。弁護団は今月には合宿を開き、最終弁論に向けて、さらなる力を結集していきます。
 原告のみなさんがいなければ、この裁判は成り立ちませんでした。支援者の代表として原告のみなさんの勇気ある決意に深く感謝いたします。子どものいのちを守り権利を回復するため、あの時の、そして今もなく続く苦しさ悔しさを述べた意見陳述の姿が忘れられません。そして、支援者のみなさまの本裁判への揺るぎない期待と信頼、そして力強い支えなしには、ここに到達することはできませんでした。支援団独自の動き方、個々人の支援の仕方から事務局は多くを学ばせていただきました。深く感謝申し上げます。

 次回はいよいよ最終弁論となります。期日は7月28日(火)午後1時30分より。当日の日程は後日ブログなどでお知らせします。またこの日が「公正な裁判を求める署名」の最終提出となります。今回の提出により82142筆が裁判所に提出されました。あと少しのご協力をお願いいたします。

 井戸謙一弁護団長から詳細な報告が出されました。また支援団のブログやメディア報道も合わせてご覧ください。第21回期日以降、各支援団が持ち回りで会報「道しるべ」号外を編集発行しました。3月発行された会報「道しるべ第13号」は第21回から第23回期日で配付された資料の「号外特集号」です。また会報「道しるべ第14号」は第24回、25回の配付資料と第26回報告の「号外特集号第2弾」として4月半ばの発行を目指します。証人尋問の総まとめとしご活用ください。近日中に、道しるべ第13号をブログにアップします。
 
 ぜひこの報告や報道で、今回の法廷で明らかになったことを広め、お近くの方と共有してください。それが弁護団の熱い思いを呼応することになります。恐らく東京五輪真っ最中の開廷になりますが、7月28日、みなさまと福島地裁で会えることを心より楽しみにしております。



子ども脱被ばく裁判第26回口頭弁論期日のご報告 
弁護団長 井戸 謙一

 さる3月4日、山下俊一氏の証人尋問が行われ、この裁判の終盤の大きな山を越えました。弁護団としては、万全の準備をして臨んだつもりでしたが、振り返れば反省点が多々あります。しかし、獲得した成果も大きかったと考えています。
 山下氏は、尋問前に提出書面で、自分が福島県民に対してしたのは「クライシスコミュニケーション」であり、住民のパニックを抑えるためには、わかりやすい説明が必要だったのだと正当化していました。しかし、いくら緊急時であっても、住民に嘘を言ったり、意図的に誤解を誘発することが正当化されるいわれはありません。私たちは、山下氏がした具体的な発言の問題点を暴露することに重点を置きました。
 山下氏は、福島県内の講演では、ゆっくりと余裕を感じさせる話しぶりでしたが、法廷では、語尾が早口で消え入るように小さな声になり、緊張感が窺えました。尋問によって山下氏に認めさせることができた主な点は、次のとおりです。

(1) 100ミリシーベルト以下では健康リスクが「ない」のではなく、正しくは「証明されていない」であること

(2) 国際的に権威ある団体が100ミリシーベルト以下の被ばくによる健康影響を肯定しているのに、そのことを説明しなかったこと

(3) 「年100ミリシーベルト以下では健康被害はない」との発言は、単年だけの100ミリシーベルトを前提としており、連年100ミリシーベルトずつの被ばくをする場合は想定していなかったが、住民には、連年100ミリシーベルトずつの被ばくも健康被害がないとの誤解を与えたこと

(4) 「1ミリシーベルトの被ばくをすれば、遺伝子が1つ傷つく」と話したのは誤解を招く表現だったこと、すなわち、実効線量1ミリシーベルトの被ばくをすれば、遺伝子が1つの細胞の1か所で傷がつき、人の身体は37兆個の細胞でできているから、全身で遺伝子が37兆個所で傷つくことになるから、自分の発言は、37兆分の1の過小評価を招く表現だったこと

(5) 子どもを外で遊ばせたり、マスクをするなと言ったのは、リスクとベネフィットを考えた上のことだったこと(すなわち、子どもを外で遊ばせたり、マスクをしないことにはリスクがあったこと)

(6) 水道水にはセシウムが全く検出されないと述べたのは誤りだったこと

(7) 福島県民健康調査で福島事故後に生まれた子供に対しても甲状腺検査をすれば、多数見つかっている小児甲状腺がんと被ばくとの因果関係がわかること

(8) 鈴木眞一氏がいうように、福島県民健康調査で見つかり摘出手術をした小児甲状腺がんには、手術の必要がなかったケースは存在しないこと、

被ばく医療の専門家が住民に対してこれだけ多数の虚偽の説明をした目的は何だったのか、山下氏を利用した国や福島県の意図はどこにあったのか、今後、これらを解明していかなければなりません。弁護団は、これから最終準備書面の準備にかかります。裁判は、次回の7月28日午後1時30分からの弁論期日で結審します。年内か年明けには判決が言い渡される見通しです。最後までご支援をお願いします。2020年3月7日 以上

2020年3月10日
子ども脱被ばく裁判の会 共同代表 片岡輝美

2020年2月19日水曜日

第25回子ども脱被ばく裁判期日報告と第26回期日のご案内

子ども脱被ばく裁判をご支援くださるみなさま


 2020年2月14日、子ども脱被ばく裁判第25回口頭弁論が開かれました。福島地裁前集会が始まる1時間以上前から、Johnny & friendsのおふたりがウエルカム演奏で参加者たちを和ませてくださいました。ありがとうございます。配付資料120部はほぼ無くなりました。それほどの参加者が全国各地から集まってくださったことも深く感謝申し上げます。地裁前アピールは生業裁判の現状報告や原発事故被害者団体連絡会(ひだんれん)が間もなく予定している「福島はオリンピックどこでねぇ」アクションのアピール、またジャーナリストの立場から発言がありました。傍聴券を求める列は今まで最も長くなったと思われます。傍聴券を入手できなかった方のために、多くのみなさんが自発的に譲ってくださいました。傍聴できなかった支援者のみなさんは、福島駅前でのチラシ配布とアッピールに1時間、地裁と市役所周辺で横断幕を持ち、道行く人々に、現在鈴木眞一氏の証人尋問が行われていることをアピールしてデモ行進すること1時間と、法廷への連帯行動をとってくださいました。心より感謝申し上げます。

 法廷でのやりとりについては、下記の井戸弁護士の報告とIWJによる報告集会の録画をご覧ください。弁護団が詳細な報告、傍聴者からの質問や意見などが録画されています。

 当日、裁判所に256筆の署名が提出され、総数は80,464筆となりました。ありがとうございます。最終弁論が最後の提出となります。あと4ヶ月ほどのご協力を心よりお願い致します。

  3月4日、第26回期日を迎え、いよいよ山下俊一氏の証人尋問が行われます。東京電力福島第一原子力発電所事故後、福島県内をくまなく回り、放射能被ばくは心配無用と説いた人物です。このことにより、この国の歴史上かつてない核災害が起きたにもかかわらず、子ども達は無用な被ばくを強いられました。弁護団は国の責任を最後の口頭弁論で追及します。そして、夏頃の最終弁論を経て、2020年末または年明けに判決が出ます。

 証人尋問に備えて、私たちは全国に緊急カンパをお願いさせていただきましたが、目標額を遥かに上回ることができました。改めて責任の重大さを感じつつ、緊急カンパの終了をお伝えいたします。寄せられましたご厚意は、大切に用いさせていただきます。


◆子ども脱被ばく裁判第26回期日のご案内◆
日時:2020年3月4日(水)12:00〜19:00
裁判:福島地方裁判所 〒960-8512   福島市花園町5-38 ℡024-534-2156
報告会:福島市市民会館第2ホール 〒960-8021福島市霞町1番52号  ℡024-535-0111
日程:
12:00 福島地裁前集合・アピール
12:30 傍聴券抽選開始
13:30 開廷 証人尋問 山下俊一氏
17:00 閉廷
17:30 記者会見
18:00 報告集会
19:00 終了


◆第25回口頭弁論期日報告◆           
弁護団長 井戸 謙一
 2020年2月14日、第25回口頭弁論期日では、注目の鈴木眞一氏証人尋問が行われました。原告側60分、被告側60分の持ち時間制で行われ、限られた時間で有効な回答を引き出すことが求められました。
 私たちは、次の4つの目標を立てました。①鈴木氏が甲状腺摘出術をした約180例のケースは、いずれも手術が必要だったケースであり、過剰診断、過剰治療ではないこと、したがって、今後、福島県民健康調査を縮小すべきではないという鈴木氏の意見をはっきりと述べてもらうこと、②福島県民健康調査で多数の甲状腺がん患者が見つかったのはスクリーニング効果であり、福島県で小児甲状腺がんが多発しているものではないという鈴木氏の主張が不合理であることを裁判所に認識させること、③経過観察に回した子供たちの予後を把握せず、福島の子ども達から発生した甲状腺がんの総数を明らかにしない点に、福島県民健康調査の闇があることを明らかにすること、④被ばくと甲状腺がんの因果関係を否定する鈴木氏の判断に合理性がないことを明らかにすること、以上です。
 鈴木氏は、①について、自分が執刀したすべてのケースにおいて、手術が必要だったこと、福島県民健康調査は今の「サイズ」で継続すべきことを明言しました。②については、「福島で多発していないとすれば、摘出術が必要な子供が全国で1万2000人以上存在する計算になるがその子供たちを救わなくてよいのか」という質問に対し、回答を言い淀んでいました。鈴木氏が、本音では、手術を要する子供が全国にそんなにいるとは思っていない、逆に言えば、福島で多発していると思っていることを裁判所に感じ取っていただけたのではないかと思います。③では、鈴木氏がいわき市や会津若松市の病院でも甲状腺の摘出術をしていること、その症例は福島県民健康調査の件数に入っていないこと等が明らかになりました。福島県民健康調査検討委員会は、甲状腺がんの悪性若しくは悪性疑いの数を237人と報告していますが、それ以外に甲状腺がんにり患した子どもがどれだけの人数隠されているのか、闇がいよいよ深くなったと思います。④については、鈴木氏はそもそも複数の考え方が示されている問題について、そのうちの一つの考え方に固執しているにすぎないこと、そもそも悪性若しくは悪性疑いの総数が明らかにされていないのですから、被ばくとの因果関係について適切な判断ができるはずがないこと、それらのことを浮き彫りにして終わりました。
 60分では時間が全く足らなかったというのが率直な感想です。しかし、制約がある中での一定の成果も獲得できたと思います。次回の山下俊一氏の尋問は90分間です。今回の経験を踏まえて、次回の戦略を立てたいと思います。引き続き、ご支援いただきますよう、よろしくお願いいたします。