2016年5月26日、第5回口頭弁論期日。福島地裁には約50人の傍聴希望者。事前の説明会では、「子ども人権裁判」を、「親子裁判」から分離して判決に進むのでは…とのことでしたので、みんな緊張して法廷に臨みましたが、分離されることもなく、実体の審理に進む模様。これは明るい兆しと言えましょう。次回8月8日第6回口頭弁論期日にむけ、なお一層のご支援をお願いいたします。
第5回口頭弁論期日報告
弁護団長 井戸 謙一
1 第三次提訴
2016年5月10日、第三次提訴を行いました。子ども人権裁判には、新たに3名の子供たちが、親子裁判には新たに27名の親子が原告に名乗りをあげました。
2016年5月10日、第三次提訴を行いました。子ども人権裁判には、新たに3名の子供たちが、親子裁判には新たに27名の親子が原告に名乗りをあげました。
2 進行協議期日(2016年5月26日午後2時)
口頭弁論期日に先立ち、進行協議期日が開かれました。席上、裁判官は、第三次提訴があったので、これを第一次提訴・第二次提訴分と併合審理する予定であること、したがって、行政訴訟部分(「子ども人権裁判」のことです。)を国家賠償訴訟部分(「親子裁判」のことです。)から分離して判決をするか否かは、第三次訴訟を併合してから決めることを述べ、「本日の口頭弁論期日では、分離はしない」という方針を明らかにしました。その上で、裁判長は、次のように発言しました。
「行政訴訟部分の原告らの請求は、多岐にわたっており、問題となっている「訴訟要件」も同一ではない(被告市町村は、子ども人権裁判は、『訴状要件』が欠けているから門前払い却下すべきだと主張しています。)。裁判所が、行政訴訟部分を分離して判決した場合、結論がすべての請求について同一になるとは限らない(一部の請求は、訴訟要件を欠き、違法であるから却下しても、一部の請求については訴訟要件を備えており、適法であるという判断になることがあり得るということ)。その場合、原告は、却下された請求については、控訴するだろうから(適法な請求は、福島地裁で審理が続けられるので)、子ども人権裁判が、仙台高裁と福島地裁の双方で同時に審理されることになる。こうなると、原告も被告も負担が大きい。従前、被告市町村は、行政訴訟部分を分離して判決することを裁判所に求めており、裁判所もそのつもりであった。しかし、上記のような事態が生じ得るのだから、被告市町村には、行政訴訟部分の分離・判決を裁判所に求めるのか、再検討してほしい。」
裁判長は、要するに、「行政訴訟部分(子ども人権裁判)を分離・判決しても、すべての請求について訴訟要件がないとして却下するという判断はできないと考えている。そうなると、分離・判決をする意味がないので、被告市町村は、裁判所に対し、分離・判決を求める意見を撤回してほしい。」と、暗に求めたのだと理解できます。
これで、子ども人権裁判について、少なくともすべての請求が却下されるという心配は事実上なくなり、実体の審理(行政が、希望する子どもたちを今よりも安全な地域で教育する義務があるか)に入ることができることがほぼ確実になりました。たくさんの方々のご尽力により、全国から多数の署名と要請ハガキを寄せていただいたこと、原告の人たちが口頭弁論の都度、裁判官に対して直接訴え続けたことが実を結んだものと思います。なお、最終的な決定は、次回になされます。
口頭弁論期日に先立ち、進行協議期日が開かれました。席上、裁判官は、第三次提訴があったので、これを第一次提訴・第二次提訴分と併合審理する予定であること、したがって、行政訴訟部分(「子ども人権裁判」のことです。)を国家賠償訴訟部分(「親子裁判」のことです。)から分離して判決をするか否かは、第三次訴訟を併合してから決めることを述べ、「本日の口頭弁論期日では、分離はしない」という方針を明らかにしました。その上で、裁判長は、次のように発言しました。
「行政訴訟部分の原告らの請求は、多岐にわたっており、問題となっている「訴訟要件」も同一ではない(被告市町村は、子ども人権裁判は、『訴状要件』が欠けているから門前払い却下すべきだと主張しています。)。裁判所が、行政訴訟部分を分離して判決した場合、結論がすべての請求について同一になるとは限らない(一部の請求は、訴訟要件を欠き、違法であるから却下しても、一部の請求については訴訟要件を備えており、適法であるという判断になることがあり得るということ)。その場合、原告は、却下された請求については、控訴するだろうから(適法な請求は、福島地裁で審理が続けられるので)、子ども人権裁判が、仙台高裁と福島地裁の双方で同時に審理されることになる。こうなると、原告も被告も負担が大きい。従前、被告市町村は、行政訴訟部分を分離して判決することを裁判所に求めており、裁判所もそのつもりであった。しかし、上記のような事態が生じ得るのだから、被告市町村には、行政訴訟部分の分離・判決を裁判所に求めるのか、再検討してほしい。」
裁判長は、要するに、「行政訴訟部分(子ども人権裁判)を分離・判決しても、すべての請求について訴訟要件がないとして却下するという判断はできないと考えている。そうなると、分離・判決をする意味がないので、被告市町村は、裁判所に対し、分離・判決を求める意見を撤回してほしい。」と、暗に求めたのだと理解できます。
これで、子ども人権裁判について、少なくともすべての請求が却下されるという心配は事実上なくなり、実体の審理(行政が、希望する子どもたちを今よりも安全な地域で教育する義務があるか)に入ることができることがほぼ確実になりました。たくさんの方々のご尽力により、全国から多数の署名と要請ハガキを寄せていただいたこと、原告の人たちが口頭弁論の都度、裁判官に対して直接訴え続けたことが実を結んだものと思います。なお、最終的な決定は、次回になされます。
3 口頭弁論期日(2016年5月26日午後3時)
口頭弁論において、原告側は、準備書面(11)、(12)、(13)を陳述しました。
口頭弁論において、原告側は、準備書面(11)、(12)、(13)を陳述しました。
準備書面(11)は、子ども人権裁判の請求が訴訟要件を備えている旨を主張したものです。
準備書面(12)は、東大の児玉龍彦教授に作成していただいた意見書に基づいて、スピーディやモニタリングデータ等の情報を隠ぺいした国の不作為を断罪したものです。児玉教授は、意見書で、特に文科省の無為無策を厳しく追及しておられます。
準備書面(13)は、安定ヨウ素剤を服用させなかったことの違法主張の追加であり、1999年にウクライナの内分泌代謝研究所所長のトロンコ氏が発表した論文では、小児甲状腺がんになった子どもたちの甲状腺吸収線量は、100mSv以下が過半数であり、36%の子供たちは50mSv以下、15%の子供たちは10mSv以下であったことが分かっており、これを踏まえてWHOは、安定ヨウ素剤服用の基準を小児甲状腺等価線量10mSvに引き下げたのだから、100mSvのまま放置していた日本の基準は、高すぎて違法である、等と主張したものです。
他方、被告国からは、長期低線量被ばくの健康リスクについて、本格的な主張が出てきました。長期低線量被ばくによる健康被害は、発がん以外にはなく、発がんのリスク増加も100mSvを超えない限り、認められていないとし、ICRPの2007年勧告は正当であって、国は、これに従ったものであって何ら問題はないというのです。そして、国には、モニタリングデータを住民に提供する法的義務はない、20mSv通知は、指導助言にすぎず、これに従うか否かは、福島県の判断に委ねられていた、と断じました。
また、今回も2名の原告が、意見陳述をしました。その静かな怒りは、法廷中の人たちの胸に突き刺さったことと思います。
他方、被告国からは、長期低線量被ばくの健康リスクについて、本格的な主張が出てきました。長期低線量被ばくによる健康被害は、発がん以外にはなく、発がんのリスク増加も100mSvを超えない限り、認められていないとし、ICRPの2007年勧告は正当であって、国は、これに従ったものであって何ら問題はないというのです。そして、国には、モニタリングデータを住民に提供する法的義務はない、20mSv通知は、指導助言にすぎず、これに従うか否かは、福島県の判断に委ねられていた、と断じました。
また、今回も2名の原告が、意見陳述をしました。その静かな怒りは、法廷中の人たちの胸に突き刺さったことと思います。
4 今後の予定次回期日は、8月8日(月)午後3時からです。次々回期日は、10月12日(水)午後3時、次々々回期日は、12月12日午後3時とさだめられました。期日のペースが2か月に1回と早くなってきました。裁判所の姿勢が積極的になってきたように感じます。
いよいよ、本格的な議論が始まりました。引き続き、ご支援をお願いいたします。
いよいよ、本格的な議論が始まりました。引き続き、ご支援をお願いいたします。
以上