子ども脱被ばく裁判のみなさま
片岡輝美です。4月25日第14回子ども脱被ばく裁判が開かれました。冷たい雨が降る中でしたが、県内や近県からも、そして関東や関西、鹿児島からも大勢の支援者が駆けつけてくださいましたこと、深く感謝致します。ありがとうございます。
午前中の学習会には山田國廣氏を講師にお迎えし「初期被曝の衝撃」と題してご講演をいただきました。福島原発事故直後から7年間、福島に幾度も足を運び除染作業に携わった山田氏は、個々人の初期被曝を算出することが隠された事実を解明することにつながると考え「行動記録算定ソフト」開発に着手。大量放出されたプルームを、公的データで発表されている毎時の線量とSPEEDIの流れと共に解析することで、プルームの流れが同じ場合、線量の移行や比率が同じであることを解明しました。そこから公的データを元に個々人の被曝線量が算定できると考え、ソフトの開発に至りました。山田氏は「事実を解明することを諦めないでほしい。この算定から出された初期被曝線量が無用な被曝をさせられた事実の裏付けになっていくはず」と原告たちを励ましてくださいました。
短い休憩の後、井戸謙一弁護団長から当日の争点について説明がありました。本期日より遠藤東路裁判長に交替したため、原告・被告両代理人弁護士からこれまでの争点を説明する「更新弁論」が行われ、大変興味深い法廷になるとのが話がありました。また、河野益近氏、郷地秀夫氏には「不溶性放射性微粒子の内部被曝による健康リスク」について詳細かつ膨大な意見書を作成していただいたことが報告されました。
小雨の降る中、裁判所前ではアピールが行われ次々と支援者や各地で裁判闘争を行っている当事者から連帯の挨拶があり、「公平な裁判を求める署名4231筆」を持って裁判所内へ入る原告5名を大きな拍手を持って見送りました。署名の総数は55081筆になりましたこと、感謝を持ってご報告します。
下記の井戸弁護団長裁判報告はぜひ拡散してください。また原告被告の準備書面は弁護団ブログに掲載されています。傍聴した私たちは、原告代理人が行う更新弁論から改めてこの裁判の争点を確認することができました。熱く弁論する弁護団からこの裁判にかける思いが伝わってきました。しかし、国の代理人が行う弁論では、この原発事故の責任を取るべき立場にある者とは到底思えない論旨が展開され、次第に傍聴席のざわめきは大きくなりました。裁判の最後に行われた原告の意見陳述は、国や福島県、地方自治体の無責任な釈明を冷静、かつ理路整然と情報の裏付けと共に論破していきました。「可能な限り精一杯食事や環境にも気をつけて育ててきた大切な子どもを、放射能という得たいのしれないものに傷つけられてなるものか」との訴えが静かな法廷に怒りとなって広がりました。今回の裁判も民の声新聞さんが詳細で分かりやすく取り上げてくださっています。ありがとうございます。ぜひご覧ください。
民の声新聞:http://taminokoeshimbun.blog.fc2.com/blog-entry-249.html
第15回期日は7月9日(月)、第16回期日は10月16日(火)、第17回期日は12月11日(火)となり、いずれも午後2時30分の開廷です。ぜひ今から予定に入れてください。また、事務局からもうひとつお願いがあります。毎回、原告たちが福島県庁記者クラブに出向き告知を行っていますが、記者会見に繋がりません。内部被曝、国や福島県の責任、子どもの健康と権利を守る幾つもの重要な争点に向き合うこの裁判を、お知り合いのメディア関係者にも伝えていただけますよう、署名拡散と合わせてお願い致します。近々、新しいリーフレットを作り拡散にご利用いただきたいと考えております。 今後とも、子ども脱被ばく裁判をお支えください。どうぞよろしくお願いします。
子ども脱被ばく裁判第14回口頭弁論期日報告 2018年4月25日
弁護団長 井戸 謙一
1 今年の4月1日付で裁判長が交替しました。新裁判長は、遠藤東路氏。丁寧で穏やかな方という印象でした。
2 本日は、裁判長が交替したため、当事者が今まで積み重ねてきた主張の概要を口頭で説明しました。「更新弁論」といいます。原告側は各弁護士が分担して約40分間、口頭説明をしました。被告国は、訟務検事が約20分間、国の主張を口頭説明しました。その他の被告(福島県、福島市、郡山市、田村市、いわき市、会津若松市、川俣町)は更新弁論を行いませんでした。
3 被告国の更新弁論は、福島原発事故後の国の施策は、法令に則った裁量の範囲内のもので問題はないとするものであり、そのうち、被ばくによる健康リスクについての部分は、「国際的な科学的な知見として、少なくとも100mSvを超えない限り、がん発症のリスクが高まるとの確立した知見は得られていない」「放射線に被ばくすれば、線量の多寡に関わらず、すべからく健康に悪影響が生じるとの考え方は現在の国際的なコンセサンスにそぐわない」「原告らの主張は、国際的な合意に基づく科学的な知見に反している」等というものでした。これは、ICRPですら提唱しているLNTモデルを否定するものであり、「国際的な合意に基づく科学的な知見に反している」という言葉は、そのまま被告国にお返ししたいと思います。
4 本日原告側は、元京都大学工学部原子核工学教室技官の河野益近氏、医師で東神戸診療所長の郷地秀夫氏の各意見書を提出しました。これらは、いずれも、福島原発事故で大量に放出されたセシウムを多く含む不溶性放射性微粒子の内部被ばくによる健康リスクについて述べるもので、セシウムがこのような形態で環境中に存在することは従来は想定されていなかったこと、ICRPによれば、セシウムの生物学的半減期は、子供で40日、大人で80日とされているが、不溶性放射性微粒子の半減期は数十年にわたると考えられており、ICRPが提唱する内部被ばくの評価方法は、不溶性放射性微粒子については適用できず、不溶性放射性微粒子による内部被ばくのリスクの程度はわかっていないこと、土壌汚染濃度が高い地域では、土壌に含まれている不溶性放射性微粒子が風等によって再浮遊し、呼吸によって人の体内に侵入する危険が高いこと、このような未知の危険に子どもたちを晒すべきではないこと等を述べるものです。これらの意見書は、弁護団のブログにアップしますので、是非多くの方にお読みいただきたいと思います。
5 本日、原告側は、次の準備書面を提出しました。
(1) 準備書面51 河野意見書、郷地意見書に基づいて不溶性放射性微粒子の内部被ばく、接触被ばくの危険性を述べるもの
(2) 準備書面52 被告福島県に対し、県民健康調査において経過観察とされた子供たちから発症した甲状腺がん患者の数を公表するように求めたもの
(3) 準備書面53 原告らの陳述書に基づき、被告国及び被告県の違法行為の結果、子どもが無用な被ばくをし、精神的な苦痛を被ったことを主張するもの
6 被告福島市ほかの市町は、不溶性放射性微粒子による健康リスクについて述べた原告準備書面45に対する認否をしましたが、いずれも「不知」、すなわち、「原告の主張は、認めないが、反論もしない。原告の主張が正しいかどうかは知らない、」というものでした。これに対し、原告側は、子ども達の健康に責任を負っている被告福島市ほかの市町が「不知」という認否をするのは無責任であって、認めないのであれば、その理由を詳細に主張すべきであると述べました。
7 今回も原告のお母さんが意見陳述しました。福島原発事故初期における行政の怠慢を厳しく指摘するもので、その内容は、見事に国の代理人の上記要約陳述の欺瞞性を厳しく追及するものとなりました。
8 今回は、新たに4231筆の署名を裁判所に提出できました。署名活動へのご協力、ありがとうございました。
9 次回口頭弁論期日は、7月9日午後2時30分、その次の期日は、10月16日午後2時30分、その次の期日は、12月11日午後2時30分です。引き続きのご支援と多数の傍聴をお願いいたします。
以上