2017年5月11日木曜日

県民健康調査・甲状腺検査のあり方に関する要請書提出

■県民健康調査・甲状腺検査のあり方に関する要請書提出報告■
5月9日、「県民健康調査・甲状腺検査のあり方に関する要請書」を「原発事故被害者団体連絡会(ひだんれん)と共に提出し、記者会見を行いました。参加者は、武藤類子共同代表を始め福島県在住、また神奈川や東京から駆けつけたひだんれん6名のみなさん、子ども脱被ばく裁判の会からは今野寿美雄さんと片岡輝美、支援者のみなさん3名の計11名でした。

午前10時、要請書受け取りの場所に指定された県庁西調査2階喫茶コーナーで、県民健康調査課主任主査・福島秀幸さんと洞口一之さんと会い、ひだんれんの要請書を共同代表・武藤類子さんが、子ども脱被ばく裁判の会要請書を片岡が読み上げ、手渡しました。その後30分ほど、参加者から意見を伝えました。同課担当者は「この場は要請書を受け取るだけ。要請書は意見として伺い、業務の中で生かしていく。具体的な対策については答えられない」とのことで、回答を得られませんでしたが、主に次のような意見を伝えました。

1,要請書は内堀県知事にも宛てたものであるから、必ず渡してほしい。
2,県民健康調査検討委員会委員には、この要請を必ず届けてほしい。
3,健康調査や甲状腺検査を巡って、市民団体と意見交換の場を持つことはどうか。

ひとつ確認できたこととしては、「事故当時4歳だった当該児童の親から相談があれば、県のサポート事業に該当するかどうか、検討し対応したい」との言葉です。武藤ひだんれん共同代表からこのような事例がまだあるかもしれないので、県立医大と連絡を取り合ってほしいと要請しました。また、今後5月か6月にある県民健康調査検討委員会に、今回の件について県民からの要請の内容を報告してほしい旨、重ねて伝えました。

記者会見には10社ほどが集まりましたが、質問をしたのは共同通信と河北新報のみでした。今野寿美雄さんからは、原発事故後苦闘しながら子育てをしている親の声、また将来を案じる子どもの声が紹介され、福島県はどの生命も守る施策を取るべきであることが訴えられました。記者会見での片岡の発言を添付しますので、ご覧ください。5月10日福島民報に掲載されました記事も添付します。

子ども脱被ばく裁判の会要請書には県内、全国から71団体が賛同してくださいましたこと、心から感謝申しあげます。ありがとうございます。要請書提出の際、71団体が賛同団体であることを両主任主査に伝えました。つまり、それぞれの団体に所属、つながる人々は何千何万人になり、それだけ、この事態に大きな関心が寄せられ注視されていることを自覚していただきたいと、念を押しました。頷いていましたので、何か伝わったことがあると期待しています。要請書への回答は、5月22日〆切・文書回答を指定しました。回答があり次第、ご報告します。


要請書は下記に「続きを読む」をクリックください。↓

*******要請書*******

福島県知事     内堀雅雄 様
県民健康調査課課長 鈴木陽一 様 

県民健康調査・甲状腺検査のあり方に関する要請書

 県民健康調査は、東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故(以下「福島原発事故」という)による放射性物質の拡散や避難等を踏まえ、「県民の被ばく線量の評価を行うとともに、県民の健康状態を把握し、疾病の予防、早期発見、早期治療につなげ、もって、将来にわたる県民の健康の維持、増進を図ること」を目的として実施されています。さらに、県民健康調査の詳細検査の一つである甲状腺検査は「子どもたちの健康を長期的に見守ること」を目的として、2011年3月11日時点で概ね18歳以下の福島県民を対象に、甲状腺(超音波)検査を実施しています。
 これまで、甲状腺検査で184人の子どもたちが「小児甲状腺がんないしその疑い」と診断され、そのうち、約150人の子どもたちが手術を受けたとされています。これらが、福島原発事故の放射線被ばくに起因するか否かは別としても、福島県内に184人の小児甲状腺がんないしその疑いとされた子どもたちが存在することそのものが、極めて由々しき事態と指摘せざるを得ません。
 甲状腺検査は、被ばくによる健康被害の早期発見・治療のみならず、福島原発事故による放射線被ばくと小児甲状腺がん発症との因果関係を調べる上で、非常に重要な疫学調査の側面を有しており、私ども県民の期待も大きい検査です。
 ところが、今般、福島原発事故当時4歳の児童から小児甲状腺がんが発見されながらも、その児童が、県民健康調査で公表されている「甲状腺がんないしその疑い」の数に反映されていないことが分かりました。
 この点につき、福島県立医大内で県民健康調査の運営組織として設立された放射線医学県民健康管理センターは、「甲状腺検査Q&A」において、甲状腺検査の2次検査で経過観察となり、その後、通常の保険診療を受けていた人が甲状腺がんと診断された場合は、県民健康調査の「悪性ないし悪性疑い」の数に反映されず、手術を受けても手術症例数に加えられないことになっているとの説明をしました。
 そもそも、甲状腺検査は、疫学調査の側面を有していますから、甲状腺がんないしその疑いとされた子どもたちの人数を、より正確に把握することが大切であることは述べるまでもありません。低線量の放射線の影響をみるためには、長期間経過を見守る必要があります。放射線医学県民健康管理センターも「低線量の放射線の影響をみるためには、長期間経過を見守る必要があります」と述べていますが、「影響をみる」ためには、福島原発事故で被ばくした子どもの中から小児甲状腺がんを発症した子どもたちについて、その数、進行度、手術予後等の全体像を把握する必要があることは自明です。従いまして、今回の件は、疫学調査の信頼度のみならず、県民からの信頼も大きく損ねかねず、極めて憂慮すべき事態と考えています。
 そこで、下記の事項について要請し、書面での回答を522()までに求めます。


・要請事項1  甲状腺検査で、これまでに二次検査で経過観察とされた子どもたちの中で、その後に小児甲状腺がんと判明した人数を明らかにするとともに、今後は、二次検査で経過観察とされた子どもたちの中で、その後に小児甲状腺がんと判明した場合にも必ず公表するよう、ルールを変更してください。

・要請事項2  福島原発事故後に誕生した子どもも甲状腺検査の対象とするなど、より質、回数共に充実した疫学調査としてください。                             

以上
  
 2017年5月9日

       子ども脱被ばく裁判の会
   連絡先:郡山市桃見台8番地レールシティ桃見台702
メールアドレス kodomo2015-info@oregano.ocn.ne.jp
代表電話番号  080−5520−4979


*******記者会見資料*******

県民健康調査・甲状腺検査のあり方に関する要請書・記者会見

 本日はご多忙の中、記者会見にお集まりいただき、ありがとうございます。子ども脱被ばく裁判は20148月福島地裁に提訴された「子ども人権裁判」と「親子裁判」の二つから成り立っています。私は子ども脱被ばく裁判の会共同代表の片岡輝美と申します、どうぞよろしくお願いします。
 さて、この度、福島県知事と県民健康調査課宛てに、原発事故当時4才だった児童が、「甲状腺がんまたは強い疑い」の統計の中に加えられていなかったことを由々しき事態と考え、要請行動を起こしました。
 この要請を通して、私たちは次の4点が大きく問われていると考えます。

1,      福島県立医科大の倫理感が大きく問われています。
 医療に従事する病院、医療に従事しようとする人材を育成教育する医科大としての使命を、どのように考え捉え、実践しているのかを、私たち県民は厳しく問いただしたい。このお子さんの手術を担当した医師たち、またその手術の責任を担っている医科大が、通常診療に移ったケースであるから、統計に入れる必要がないと判断したのであれば、それは、県民が望んでいる甲状腺検査のあり方とは大きくかけ離れた判断であり、私たちはそのことに大きな懸念を持っていることを、はっきりと自覚していただきたいのです。制度で患者を区分けするのではなく、医療従事者の良心と誇り、倫理感と謙虚さを持って、患者とその家族に向き合っていただきたいと強く願います。

2,      福島県立医科大を管轄する福島県や県民健康調査課のあり方が大きく問われています。
 今回の事例が明らかになる前に、福島県や調査課はこの事例を把握していたのでしょうか。または、していなかったのでしょうか。もし、把握していながら県民健康調査検討委員会に報告していなかったのであれば、それは、極めて福島県の姿勢が由々しき事態になっていることだと思われます。一方、もし、把握してなかったとすれば、医科大を管轄する能力に大きな疑問を感じざるを得ません。
 福島県や調査課は、医科大同様、制度で患者を区分けするのではなく、県民の生命と健康を守る行政のトップとして、良心と誇り、倫理感と謙虚さを持って、県民に向き合って頂きたいのです。

3,      マスコミの姿勢も大きく問われています。
 マスコミのみなさんは、県や医科大の発表をそのまま報道するのではなく、原発震災後の時代を生きるメディア人として、事態を冷静に見極め、真実を見抜き、市民県民にとって、本当に重要なことを報道する姿勢、誇りを持って頂きたいと思います。

4,      私たち市民や県民の姿勢も大きく問われています。
 私たちは、ややもすると数字や人数の多さに目を奪われます。しかし、私たち、ここには県立医科大も福島県もメディアのみなさんも含みますが、その子に何があって、何が起きているのか、その子とその御家族が、今、どんな思いでいるのかに思いを馳せる者でありたいと思うのです。

 次の世代、さらにその次の世代に、原発事故の大きな負債を追わせてしまった責任を、それぞれの立場でどのように取っていくのかが、問われています。福島県と県民健康調査課におかれましては、私たちの要請事項に誠意をもって応えること、ここからさらに、県民の生命と健康を守る施策が取られていくことを、心から強く要請いたします。

201759日 子ども脱被ばく裁判の会