2020年8月9日日曜日

子ども脱被ばく裁判、結審しました!

 

子ども脱被ばく裁判を支援してくださるみなさま

 2014年8月、福島地裁に提訴された子ども脱被ばく裁判は、今年7月28日に最終弁論が行われ結審となりました。大雨やコロナ禍にもかかわらず、当日は全国より多数お集まりいただき、ありがとうございました。この日、福島地裁には「公正な裁判を求める署名」3702筆が提出され、総計で85844筆となりましたことも、感謝を持って報告します。今も届けられている署名は、後日、今野原告代表が福島地裁に提出します。

 最終弁論を終えた弁護団や原告を迎えた会場は、ともに結審を迎えることができた喜び、達成感で溢れていました。今回はIWJさんのご協力により配信しましたので、ネット参加の方も多数おられたことと思います。原発賠償京都訴訟原告のみなさん、さよなら原発尼崎、明石たこの会、おしどりマコさんケンさんからは温かいメッセージが届き、大きな励ましをいただきました。ありがとうございました。

 当日会場へ足を運んでくださったみなさん、各地でこの日を覚えてくださったみなさんに、支援者、原告、弁護団の代表から当日の報告とご挨拶申し上げます。どうぞご一読ください。


■子ども脱被ばく裁判結審報告 共同代表・水戸喜世子

 第27回子ども脱被ばく裁判はとうとう最終弁論を終えることができました。判決は3月1日と決まりました。半年以上の長きにわたる時間が裁判長に与えられたのです。必ずや誠実に慎重に精査を重ね、国の不正を糾す公平な判決を出させねばなりません。その為に、私たちは何が有効な闘いとなるか今後の半年を悔いなく闘い抜きたく思います。コロナ禍でさまざまな制限がありますが、工夫をしながら子ども裁判で暴き出した、報道されてこなかった真実を草の根のように伝えていくのも大事な支援者の役割です。

 内部被ばくの問題、事故後の隠蔽主義は徹底していました。初期被ばく量を正しく測定しなかったことは、甲状腺検査多発の結果を因果関係なしと強弁する根拠を国側に与えました。最終弁論では、子どもを守ろうとしなかった不作為-安定ヨウ素剤の不投与、スピーディー非公開などの追求が厳しく行われました。憲法26条子どもの教育権に基づいて安全な場所で教育を受ける権利は、実は法律的には幾重にも法規で守られていて、学校環境安全基準は健康被害をもたらす環境での教育などは認めていない。目下のところ、国側の論理の通った反論は何一つ聞こえてきません。専門家への見当違いのイチャモンだけで、批判にもなっていません。内容的には圧勝といえます。

 この日の法廷は一般傍聴席はコロナ対応で13席のみ。抽選に外れ方たちは、アオウセに移動して、河野益近氏とちくりん舎の青木一政氏から放射能ばらまきの現状を50人が学びました。法廷では原告団長の明快な最終陳述のあと、弁護団6人の侍が各々のパートを担当して、各論点につき圧巻の追究。心の中で大きな大きな拍手を送りました。反論できるものなら、してみろ!本当にそう思います。大人は原発を作り、罪もない子供に多大の被害を与えました。詫びても済むものではないのですが、持てる限りの知恵を尽くし、国に心底からの怒りの異議申し立てをしました。これによって未来の子どもへの謝罪の一区切りがついたおもいです。

「現実に汚染の止まらない環境の福島で中で子どもたちは生きている。その子たちをどうするのですか」。報告集会参加者から鋭い質問がでました。司会は「重すぎて即答できない」と答えるしかありませんでした。この現実の中、どのように命を守るかはみんなが考えていかねばならないことです。300ページに及ぶ最終準備書面と原告意見陳述Ⅱの発刊に向けて、準備が進んでいます。東電福島原発事故がもたらした諸問題に立ち向かう軌跡が記されています。ご期待ください。


■原告団挨拶 原告団代表 今野寿美雄

 2020年7月28日、 子ども脱被ばく裁判が結審しました。皆様の応援御支援ありがとうございます。来年3/1に判決が出ます。子ども達が安心安全な環境で生きていける様な判決が出ます事を切に願っています。これまでの思いの全てを意見陳述に込めました。どうぞご覧ください。

子ども脱被ばく裁判 最終意見陳述書 原告代表 今野寿美雄

 原告を代表して、最終の意見を述べさせていただきます。6年の長きに渡り審議が続いてきましたが、この裁判を通して不溶性の放射性微粒子の存在及びこの物質による内部被ばくの危険性が解ってきました。これは、当裁判や他の訴訟に於いても原告側の主張を裏付ける確固たる証拠であり、非常に重要なポイントだと思います。また、事故時から現在に至るまでの行政の間違った対応や「ニコニコ安全論」等により、無用な被ばくを受けることになりました。更に、福島県民だけが年間20ミリシーベルトの被ばくを受忍させられています。到底許されるものではありません。

 9年以上が過ぎた今でも、多くの親達が子ども達の健康に不安を抱いています。子どもを心配することは親として当然の行為です。9年以上が過ぎたからと言って、原発事故は終わったわけではありません。今尚、大量の汚染水を産み出し、放射性物資を大気へ海へと放出を続けています。原発事故は、今も続いていることを忘れてはいけません。原子力緊急事態宣言発令中です。

 県民健康調査検討委員会では、今年3月末の集計で公表された小児甲状腺がんの患者の数が、確定者及び疑いのある者を合わせて240名になっています。また、この数に含まれない患者の存在も当裁判を通して明らかになりました。患者本人及び親、家族達の痛切な思いが察せられます。甲状腺検査でB判定と診断された子ども達が多数います。子どもを被ばくから護れなかった親達の無念の声があがっています。

 子ども達は、子ども達で子ども達を護ることはできません。子ども達を護ることができるのは、私達大人達しかいないのです。子どもを護ることは、私達大人達の責任です。それは私達に課せられた義務です。

 被告及び被告代理人の方々に申し上げます。皆さまにも子どもや孫達がいると思います。私達人間はそんなに賢くないと思うので、また同じような間違いを起こすと思います。ですから、皆さまは今回の事故について、国や行政の過ちを小さく見せようとするのでなく、将来を見据えた反省を、私達原告と共に被告の立場を越えて、親として大人として子ども達を護っていく為に、どうしたら良いかを考えて行動していかなければなりません。それが、大人達の責任であり義務であると思っています。

 子どもは未来からの贈り物です。かけがえのない宝物です。子どもの健やかなる成長が親の願いです。子ども達には、安全で安心な環境で教育を受ける権利があります。行政はこの権利を護らなければなりません。私達原告は、子ども達を護りたい一心で立ち上がりました。当法廷に出席できない親子の声を預かり、原告を代表しまして最後の意見陳述をさせていただき、ありがとうございました。裁判官の皆さまにおかれましては、原告の思いを受けとめていただき、子ども達に安全安心な環境と未来を提供できるような判決を出していただくことを切にお願いいたします。ご静聴、ありがとうございました。以上です。


■弁護団挨拶 弁護団長 井戸謙一

 子ども脱被ばく裁判は7月28日の口頭弁論期日で審理を終結しました。あとは来年3月1日の判決を待つだけです。約6年にわたり、多大なご支援をいただきありがとうございました。署名の最終期限が迫った時期、毎日のように全国津々浦々から多数の署名が私の事務所に届きました。最後の2~3日は多くの署名が速達で送られてきました。ほとんど報道もされない裁判ですが、多数の人々の熱い思いが伝わり、身が引き締まる思いがしました。

 この国における被ばく問題の軽視は目に余ります。ヒロシマ・ナガサキ、ビキニから引き続く問題ですが、これによって切り捨てられた多くの被害者が存在したし、今、フクシマでも多くの人が切り捨てられようとしています。他方、これに対する闘いも営々と続けられてきたのであり、最近も「黒い雨」訴訟では見事な成果が出ました。被害者が声をあげ、それを心ある市民と科学者、そして法律家が支えることでしか、この問題を打開することはできません。私たち弁護団は、原告の人たちの心からの叫びに背中を押され、科学者の方々の援助と支援者の励ましに勇気づけられ、400頁に及ぶ最終準備書面を書きあげました。判決がどのような結果になるとしても、問題提起の役割は果たせたのではないかと自負しています。

 今後も、被ばくに関連して、様々な問題が発生し、新たな訴訟も起こされるでしょう。被ばく問題は、ヒトが「核エネルギー」を手にし、一部の人間がこれを力として使いたいという野望を抱いた時に始まった問題であり、「核エネルギー」の政治的利用を断念するまで続く問題でしょう。私たちは目の前の出来事を問題にして闘っていますが、これは、世代を超え、国を超えた闘いの一環でもあります。これからも、次の世代のために、皆様方とともに、私たちの世代の責任の一端を果たしていきたいと念願しています。ありがとうございました。

◎子ども脱被ばく裁判弁護団ブログ:http://fukusima-sokaisaiban.blogspot.com


■当日の様子は下記からご覧になれます。みなさまのご協力に感謝いたします。

◎IWJ 子ども脱被ばく裁判第27回期日 学習会・記者会見・報告集会
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/478893


◎脱被ばく実現ネット 子ども脱被ばく裁判最終弁論 判決は3月1日に!
https://fukusima-sokai.blogspot.com


◎和田珠輝さん 「子ども脱被ばく裁判」結審レポート
https://note.com/momsrevo/n/n9e9dfc1dc4dc