2017年8月10日木曜日

第11回子ども脱被ばく裁判報告と感謝



子ども脱被ばく裁判支援者のみなさま

昨日8月8日、第11回子ども脱被ばく裁判口頭弁論を迎えました。懸念されていた台風の影響はほとんどなく、裁判所前集会も持つことができました。ご多忙な中、お集まりくださった皆さまへ、心より感謝申しあげます。ありがとうございます。午前中は映画「奪われた村〜避難5年目の飯舘村民」を上映し、豊田直巳監督のお話を伺いました。映像に登場する人々は多くを語りませんが、その一言一言からは無念さ、やるせなさ、苦悩が滲み出ていました。「原発事故が起きてしまった時代、大人として、どのような責任が取れるのかが問われている」との豊田監督の言葉から、映画を観た私たちは大切な視点が与えられたと感じています。


井戸謙一弁護団長の期日報告の冒頭に記されてあるように、乳児から高校生までの7名とその親御さんが原告席に並ぶ光景は圧巻でした。子どもが裁判で訴えなければならない社会の罪深さを感じつつも、しかし、健康と未来を守るための権利を行使する若者たちの姿に、午前中伺った豊田監督の言葉を想起しました。意見陳述は二人の父親でした。原発事故直後から今もなお、子どもを守ろうとしない行政のあり方に大きな不満と憤りが、法廷内で訴えられました。陳述書を読み上げるお二人の手は微かに震えていました。それは怒りを抑えるのに必死な震えであったと思います。


昨日、提出された署名は2089筆。これまでの総数は47089筆となります。全国のご協力に深く感謝申しあげます。弁護団ブログには準備書面全てが掲載されています。どうぞご覧ください。



第12回口頭弁論期日は10月18日(水)です。今からご予定に入れてください。傍聴席を埋め尽くし、いよいよ本格化する審議を見守りましょう。続けての署名活動もご協力ください。どうぞよろしくお願い致します。

子ども脱被ばく裁判の会 片岡輝美



第11回口頭弁論期日(2017年8月8日)の報告
弁護団長 井 戸 謙 一 
1 今回は、子どもたちの夏休み中であった上、福島に帰省しておられる避難者の方々もおられたため、17名(大人10名、子ども7名)もの原告親子が原告席に並びました。法廷に強いインパクトを与えたと思います。子どもたちは、書記官室に署名を届ける役割も果たしてくれました。
2 原告側は、4通の準備書面(3639)を提出しました。その概要は、次のとおりです。
(1) 準備書面36
スピーディの情報隠ぺい問題についての補充主張を内容とするもの、とりわけ、スピーディ情報が伝達されなかった原因の一つとしてオフサイトセンターが機能しなかったことがあるが、機能しなかった理由は、エアフィルターの設置を怠った国の杜撰な対応にあること等
(2) 準備書面37
ICRPLNTモデル(直線・しきい値なしモデル、低線量の被ばくであっても、その線量に応じた健康被害のリスクがあるという考え方)を採用しているのは、可能な限りの科学的検討をした上、その考え方が科学的に最も妥当であると判断したからであり、国がこれを軽視するのは誤りであること等
(3) 準備書面38
① 科学的に最も妥当だと国に原子力緊急事態宣言の具体的内容の説明を求める必要があること
②本件訴訟は、裁判所に対して、低線量被ばくの健康リスク問題についての科学的判断を求めているのではなく、低線量被ばくの健康リスクについての様々な研究結果とそれを踏まえて構築されてきた日本の法的規制(一般公衆の被ばく限度を年1ミリシーベルトとしていること、放射線管理区域の規制等)を踏まえて、その規制をはるかに超える被ばく環境で子どもたちに対する教育活動を実施することが許容されるのかという法的判断を求めているものであること
③ 公立小中学校を設置、運営している地方自治体には、義務教育を実施することによって子どもたちの健康を害することのないように配慮する義務があり、子どもたちには、地方自治体に対し、児童生徒の安全を護るために必要な措置をとることを求める権利があること
 (4) 準備書面39
近年世界で公表されている低線量被ばくについての疫学調査結果が信頼に値するものであり、国の批判は的外れであること等
3 被告国は、原子力緊急事態宣言の内容について明らかにすることを拒否しましたが、裁判所は、これを明らかにするよう国に強く求めました。また、福島県は、原告側が、県民健康調査で経過観察とされた後に甲状腺ガンが発見された子供の数を明らかにするように求めたのに対し、「その数を把握していない」として、これを拒否しました。我々は、この問題は、更に追求する所存です。
4 裁判所は、子ども人権裁判(行政訴訟)について、ほぼ議論が煮詰まったとして、次回には争点項目案を示すと述べました。親子裁判(国賠訴訟)については、あと2~3回、主張のやり取りが必要だと思われます。
5 議論は、中盤から終盤に差し掛かりつつあります。この裁判は、国や自治体の低線量被ばく対策の是非を正面から問う裁判です。引き続き、ご支援をお願いいたします。
以上